不整脈 | 病気と治療方法
不整脈

不整脈とは脈が乱れ、心臓の調律(リズム)が不規則になった状態を意味します。不整脈の原因疾患は多岐に渡っており、治療の必要のない不整脈もあれば、症状が強く日常生活に支障をきたすもの、脳梗塞や心不全の原因となるもの、突然死をきたすもの(心室細動)もあり、多岐に渡っています。不整脈には、大きく分けて脈が乱れる(飛ぶ)不整脈、脈が速くなる不整脈、そして脈が遅くなる不整脈に分類されます。

脈が乱れる(飛ぶ)不整脈
脈が乱れる(飛ぶ)不整脈には、期外収縮(上室性期外収縮、心室性期外収縮)や心房細動などがあります。自覚症状としては、動悸・脈が飛ぶなどがあります。
脈が速くなる不整脈(頻脈)
脈が速くなる不整脈には、心房細動、発作性上室頻拍、心房粗動、心室頻拍などがあります。自覚症状としては、動悸・息切れ・胸痛・倦怠感・失神などが挙げられます。
脈が遅くなる不整脈(徐脈)
脈が遅くなる不整脈には、洞不全症候群、房室ブロックなどがあります。症状としては、全身倦怠感・失神・呼吸苦などがあります。治療法には内服薬・ペースメーカーなどが挙げられます。

不整脈を治療するには、どの不整脈であるかを(心電図で)診断してから行った方が良いと考えられますが、不整脈の頻度によっては、なかなか不整脈自体を心電図でとらえることが困難な場合もあります。以下、それぞれの不整脈について解説します

脈が乱れる(飛ぶ)不整脈 :期外収縮

期外収縮(きがいしゅうしゅく)とは、通常のリズム以外に心臓の収縮が出現するものです。最もよくみられる不整脈で、期外収縮には上室性期外収縮と心室性期外収縮があります。この不整脈は、ほとんどの健康な人が持っているといわれています(上室性期外収縮は健康成人の90%以上に、心室性期外収縮は50%近くにみられるといわれています)。
自覚症状としては、脈が飛んだり抜けたりしますが、のどが詰まるような感じがしたりめまいをきたすこともあり、様々な症状を呈します。一方、自覚症状が無い方も多く、健診で初めて指摘される方も多いです。基本的に期外収縮は放置しておいて問題ないものが大半なのですが、時として他の心臓病(心筋梗塞や心筋症など)を伴っている場合があり注意が必要です。また期外収縮が連続すると、血圧低下・めまい・失神をきたし、最悪の場合、心室細動に移行してしまうこともありますので、注意が必要です。
検査は、ホルター心電図(24時間装着した心電図)を行い、24時間でどのくらい期外収縮がでているか、期外収縮が連続していないかどうか、などを確認します。その他、一般的な心臓の検査(採血・レントゲン・心エコー・冠動脈CT・心臓MRIなど)を行い、心臓の病気が隠れていないかどうかを検査します。
期外収縮の治療法としては、1. 不整脈の内服薬 2. アブレーション手術、などが挙げられます。また、精神的あるいは身体的ストレスにされると期外収縮が出やすいと言われていますので、ストレス・過労・睡眠不足などの生活習慣を改善する必要があります。 ▲黄色矢印が心室性期外収縮を表します。

脈が速くなる不整脈(頻脈)

頻脈とは、文字通り心臓が必要以上に速くに動くことで起こる不整脈です。自覚症状としては動悸がほとんどで、場合によっては意識消失などが生じる事があります。頻脈の発生する起序や場所の違いで、上室性頻脈や心室性頻脈に分類されます。
上室性頻脈は心房側から生じる頻脈の事で、上室性発作性頻拍(PSVT)やWPW症候群が原因で発生する頻拍です。突然、脈が速くなるのが特徴です。数分~数時間で自然停止することもあります。上室性頻拍の場合は、血圧が保たれることが多いため、発生中も意識障害の頻度は少ないですが、動悸症状が強いのが特徴です。
心室性頻脈は心室側から生じる頻脈の事で、心室頻拍(VT)や心室細動(Vf)があります。上室性頻拍同様に突然、脈が速くなり、加えて血圧低下を呈すことが多いため、意識消失の頻度が高いのが特徴です。また、血行動態が破たんする危険な不整脈(心室細動)に移行することもあり、直ちに電気ショックを行わないといけない場合があります。
頻脈の治療法としては、1. 不整脈の内服薬 2. カテーテルアブレーション 3.デバイス治療などが挙げられます。
内服治療の場合は対象の頻脈に対する抗不整脈薬を内服し、頻拍の出現を予防します。
頻拍が出現した場合には、一時的に点滴注射を追加して停止させます。頻脈発作の頻度が多い場合には、カテーテルアブレーション(高周波カテーテルアブレーション)による根治が必要です。カテーテルアブレーションは確立された治療方法で、高確率で根治が可能です。
心室性頻拍の場合には、カテーテルアブレーションに加え、必要時にデバイス治療(植込み型除細動器)による治療が必要な場合もあります。

心房細動について

心房細動(しんぼうさいどう)とは、文字通り、心房が細かく動くことで起こる不整脈です。心房が震えるように動いており、それに伴い、心室もバラバラに収縮するため、脈が不規則(バラバラ)になります。心臓病(弁膜症・心不全・先天性心疾患など)やホルモン異常(甲状腺機能亢進症など)に伴って起こることもありますが、基本的にははっきりとした原因はわからずに発症される方も多い不整脈です。
心房細動は、発作的に起こる「発作性心房細動」と、慢性的に起こる「慢性心房細動」に分けられます。最初は、「発作性」に発症することが多いのですが、やがて「慢性」に移行することが多いと言われています。
心房細動自体はそれほど怖い不整脈ではありませんが、脳梗塞の原因となる不整脈ですので注意が必要です。心房が細かく動くことで心房内に血液の“よどみ”ができることで血栓ができやすくなり、最終的にその血栓が脳に飛んでしまうと脳梗塞を発症してしまいます。 また、心房細動の中には脈が速いもの(心拍数120~150/分)もあり、放置していると、次第に心臓が疲れてきて、心臓のポンプ機能が低下し、心不全をきたすこともあります。
心房細動と言われたら、一度病院を受診することをお勧めします。

▲心房細動の脈です。脈が、(等間隔でなく)バラバラに出ているのがわかります

心房細動の治療とは?

心房細動の治療には大きく分けて3つあります。

  • 1.抗凝固療法

    心房細動による脳梗塞を予防するため、血を固まりにくくする薬(ワーファリン、プラザキサ、エリキュース、イグザレルト、リクシアナ)を内服していただきます。
  • 2.不整脈のコントロール

    心拍を抑える薬や心房細動を抑制する薬を内服していただき、動悸による心拍数の上昇を抑えたり、心房再細動自体の発生を抑制します。心拍数を抑えることでほとんど方は症状が改善します。また、心収縮能を保持する意味でも非常に重要な治療です。
  • 3.カテーテルアブレーション

    心房細動は主に心臓の左心房と連結する肺静脈からの期外収縮から発生するため、肺静脈周囲をカテーテルによる高周波電流で焼灼し(肺静脈隔離術)、余分な電気信号が心臓に入らないようにして、心房細動の発生を抑制します。通常は局所麻酔で行い、首や足の付け根からカテーテルを挿入します。近年、標準的な治療法となり、発作性心房細動の場合には特に有効な治療方法です。

脈が遅くなる不整脈(洞不全症候群、房室ブロック)

洞不全症候群(どうふぜんしょうこうぐん)、房室ブロック(ぼうしつぶろっく)は、心臓の動く回数が極端に低下してしまう病気です。通常心臓は電気信号で一日10万回以上動いて全身に血液を循環させていますが、心臓の右心房にある刺激伝導系が何らかの原因で障害を受けてしまい脈が遅くなってしまいます。洞結節と呼ばれる心臓の動く電気信号を出す部分が障害を受けた場合(洞不全候群)や、電気信号が心臓全体に伝導しない場合(房室ブロック)となった場合に脈が遅くなり、運動しても心拍数が上昇せず、悪化すると全身倦怠感や意識消失などが生じます。一方、高齢の方は自覚症状がない場合もあり、健診で初めて指摘されることもあります。
検査としては、ホルター心電図で一日の心拍数の総数や脈が止まっている時間を検査します。さらに詳しい検査としてカテーテルによる電気生理学的検査(EPS)を行って診断する場合もあります。また、一般的な心臓の検査(採血・レントゲン・心エコー・冠動脈CT・心臓MRIなど)を行い、心臓の病気が隠れていないかどうかを検査します。
洞不全症候群、房室ブロックの治療方法としては、ペースメーカー療法が唯一です。体内にペースメーカーを植込み電気信号によって脈をサポートします。植込み手術は局所麻酔で行い、1週間程度の入院が必要です。最近のペースメーカーは、電池寿命も長くなり、自動心拍数コントロールやモード変換機能など機能面が発達し、従来埋め込み後の禁忌であるMRI検査への対応も可能になりました。

▲完全房室ブロックの脈です。三角印(心房の脈)と星印(心室の脈)がお互い関係なくバラバラに出ています。星印の脈が心拍数になりますので、心拍数が非常に遅くなります(徐脈)。