下肢閉塞性動脈硬化症とは?
下肢閉塞性動脈硬化症(かしへいそくせいどうみゃくこうかしょう、ASO: arteriosclerosis obliterans)は、下肢の大血管に狭窄をきたしたり閉塞することによって、軽い場合には冷感やしびれ、重症の場合には下肢の壊死にまで至ることがある病気です。中年以降(特に50歳以降)の男性に多いと言われています。その他には、喫煙者・高血圧症・高コレステロール血症・糖尿病・肥満・慢性腎不全などがあると、この病気になりやすいと言われています。最近では、ASOのことをPAD(Peripheral artery disease)と呼ぶことが多くなってきています。
どんな症状がありますか?
病気の進行具合により様々な症状を認めます。有名なのがフォンテイン(Fontaine)分類です。
その他、男性では、勃起障害(ED)をきたすことがあります。
間欠性跛行(かんけつせいはこう)
「跛行」とは、足を引きずるという意味です。間欠性跛行とは、目的地まで歩いている途中で、足の筋肉のだるさや痛み・こむら返りを自覚しますが、休憩すると10分以内に症状がよくなる症状のことです。少し休むと回復するので病気だと思わない方が多く存在しています。寝たきりの患者さんでは、症状が出ずに見逃されていることもあります。どうやって診断するのですか?
問診・診察にて、比較的診断は容易ですが、整形外科領域の病気(脊柱管狭窄症:背中の神経が押されることで引き起こされる病気)でも似たような症状が出る時があるため、鑑別が必要です。診察では、足のくるぶしの近くの血管(後脛骨動脈)・あるいは足背の血管(足背動脈)が触れるかどうかなどを触診します。
続いて、ABI検査(足関節上腕血圧比:両手両足の血圧を測定する検査)を行い、下肢の血流が落ちていないかどうかをチェックします(糖尿病患者さんや透析患者さんでは、異常値が出ない時もあります)。
ABI検査で閉塞性動脈硬化症が疑われれば、下肢血管エコーや造影CT検査にて、どこの血管に病変があるかを診断します。最近では下肢MRIも行われており、造影剤を使用せず、かつ被ばくしないため、体に優しい検査といえます。また、CTでは評価しにくい石灰化病変(血管が石のように固くなった病変)に対しても、MRIは優れていると言われています。当院では、原則当日に下肢MRI検査を行うことができます(予約が必要な時もあります)。
最終確定診断には、入院のうえ、カテーテル検査が必要な場合もあります。当院では、原則1泊2日の入院で、カテール検査・治療を行っています。
どのような治療方法がありますか?
病期の進行に応じて治療を行います。治療には、薬物療法・運動療法・カテーテル(風船・ステント)治療・バイパス手術などがあります。また、生活習慣病に対する生活指導も重要であり、特に禁煙は非常に大事です。
下肢閉塞性動脈硬化症の1例
さいごに
下肢閉塞性動脈硬化症とは、動脈硬化の病気、すなわち血管病ですから、足の血管だけを治療すればよいわけではありません。特に気を付けないといけないのが心臓の血管です(心臓の血管は生死に直結することがあります)。当院では、下肢閉塞性動脈硬化症をお持ちの患者さんには、心臓の血管に関しても積極的に検査・治療を行っています。また、脳の血管に関しても十分に注意する必要があると言えます。足だけを見るのではなく、全身の血管に注意する必要があり、ひいては動脈硬化の原因となる生活習慣病の管理が重要になります。